ハチミツの誘惑

甘くて甘くて、鬱陶しい

枯れた、彼ら、僕は

ゆっくり、ゆっくりと。心が枯れていくような気がしている。

じわりと浸食されていくのは、心の中の、何か。失えばもう戻ってこないかのような、これは錯覚か、それとも予感か――わからないけど恐怖がただひたすらに私を支配している。季節外れに振った雪はまるで積もっていくストレスを可視化したかのようだった。

どうしてこの世界は、こんなにも冷たいのだろう。「できる人」が許され「できない人」が消えていく現実は、それを黙って見ている風潮は、あまりにも残酷すぎやしないか。

試されているかのような目に背筋を凍らせて、それでも何とか前を向いたけれど、本当はもう泣きそうだった。何も文句は言えないんだ、分かっている。それは社会的圧力でもなんでもなく、目の前を覆う彼らが恐らく「正」だから、なんだけど。

家に帰る時間が遅いことも、入社する前から知っていた。成長志向の社風だって知っていた。だから何も言えない、言えるわけない。ただ、弱いからか――浸食されて、抗ううちに、枯れていく。

 

ひたすらに「肯定されたい」と思った。この人なら、私を抱くだろうと思った、から、連絡した。元から抱きたいと言われていた相手だ。何度か断っていたけど、もう良かった。別に身体を守りたいわけでもなく、ただ今までは、家に帰らなきゃいけないと思ったから。

久しぶりに会ったその男は「会いたかった」と笑った。

 

暗い部屋で、キスをされて、身体を触られて。「綺麗だ」なんて荒い息の合間に囁かれた。目をつぶって、祈る。どうか、どうか、枯れた心を満たしてくれ――――

 

 

ああ、どうしてこんなに、虚しいんだ。

 

セックスした後の朝日も、風も、何も私を歓迎してはくれなかった。虚しくて、満たされなくて、ただ気怠かった。

 

ありがとう、私のモラトリアム

私は明日、大学を卒業する。

 

4年間の大学生活を大人になるまでのモラトリアム期間だと称する人も多いが、文字通り受け取るのであれば、私は有意義な猶予期間を過ごしたと思っている。エリクソンが言うようなアイデンティティの確立のための必要な期間であったし、私は哲学上の青年期の課題をある程度までは克服できたと思っている。

 

私は、ひたむきに頑張る人が好きだ。

この世には世間的に良くないと言われていることに対して、「格好いい」「面白い」と感じさせてしまう幻影が潜んでいる。例えば、勉強を頑張らないこと。テスト間近に慌てて勉強をすること。単位を落とすこと。不特定多数の異性と不純に交友すること。健康的な基準度を大幅に外れたアルコールを飲むこと。夜中に酔っぱらって大声を出すこと。バイトを面倒だからとずる休みすること。基本的な教育を受けている人間に、これらの行為についてどう思うかと問えば、恐らく「あまり良くない」と答えるであろう。

しかし、この世界ではそれが偉くて、格好良くて、面白くて、人目を集めた。

 

私は染まろうとした。染まりかけたこともあった。でも、私はわたしだった。

 

それで良いのだ、と。首を縦に振った瞬間、楽になった。前を走っていく友人たちの背中を見ながら、それでも足を動かすことをやめた瞬間、大きく息を吸うことができた。

 

彼らが間違っているのか。そう自問すれば、間違っているとは言い切れないだろう。程度はあれど、彼らの行っていることは犯罪ではないからだ。故に彼らを咎めることは私の中で嫉妬であり、妬みを発散する手段であった。

 

私はひたむきに頑張ろう。

そう思ってから、私の周囲には似たような考えの人が集まるようになった。それこそが、大学4年間で得た宝だった。

 

 

 

私はわたしだ。

それは変わらない事実だ。だから前を向こう。胸を張ろう。誇りを持とう。

 

そうやって、シンプルに生きよう。

 

 

 

 

明日は卒業式。さよなら、私のモラトリアム。

 

 

 

私がさやみるに惹かれたのは

いきなりだが、私は秋元康プロデュースのアイドルグループが好きだ。AKB48をはじめとした女性アイドルグループは今や秋葉原、栄、難波、博多、新潟と全国5か所を拠点とした巨大グループへと進化し、他にも乃木坂46欅坂46といった坂道シリーズと称されるグループまで派生した。

 

可愛い女の子を眺めているだけで幸せを感じる私にとってアイドル文化の栄える日本は住みやすいことこの上ないが、上記アイドルグループの中で更に「日本好きだー!!」と思わせてくれたのはNMB48渡辺美優紀さんと山本彩さんである。

 

ファンに「さやみる」と呼ばれるこの二人は、難波を拠点に活動するアイドルグループ・NMB48の一期生であり人気実力ともにトップ2と言われたメンバーだ。リーダー山本彩とエース渡辺美優紀は常にグループの先頭かつ真ん中で踊っていた。そして二人は次第に「シンメ」だとか「難波の最強コンビ」だとか言われるようになる。

 

 


【MV】HA! / NMB48[公式](Short ver.)

 

2012年に発売されたAKB48永遠プレッシャー』のType-Bに収録されたNMB48の楽曲『HA!』のショートMVだ。これを見るだけで、さやみる最強だー!!と思わず叫んでしまう。ショートヘアで凛々しい顔つきのリーダー・山本彩とロングヘアで挑戦的な瞳のエース・渡辺美優紀が既にここには存在しているのだ。

 

 


NMB48 チームN 青い月が見てるから

 

個々でも圧倒的な存在感を放つ彼女らだが、二人揃い並んでパフォーマンスする際の「最強感」は上記の動画を見てもらえればわかると思う。「ダーリンダリン♪」とクローズアップされた先には、背中合わせで歌う二人。そこでファンはキター!と思う。かっこいいダンスナンバーはさやみるを語るには外せないほど彼女たちを引き立ててくれるが、もちろんアイドルらしいキュートな楽曲だって魅力的な二人を映し出してくれるのだ。

 

 

 NMB48には、惹きつけられる素敵なコンビがたくさんある。

さやみるの後に続いてNMBのトップを奪おうと闘志を燃やす「ふうみる」こと矢倉楓子さんと白間美瑠さんは王道アイドルと妹系アイドルとして今やグループに欠かせない存在だし、共に一期生でありNMB48というグループを支える「けいりん」こと上西恵さんと吉田朱里さんは二人とも長身でスタイルが良く二人並べばそのビジュアルは最高レベルだ。三期生と四期生の仲良しコンビ「なぎっしゅー」こと渋谷凪咲さんと薮下柊さんは弾ける笑顔でNMBにフレッシュさとチャーミングさを与えてくれているし、「ゆーりりぽん」こと太田夢莉さんと須藤凛々花さんはそのキャラとルックスで人気急上昇中でありNMBの革命児と言えるだろう。

コンビだけでなく、卒業した山田菜々さんを含めた「さやみるなな」の三人だって、ファンからすれば最強フロントメンバーだった。

 

どのコンビだってトリオだって魅力的で、ファンも多く存在する。それでは何故私は「さやみる」にこれほどまでに惹かれ、魅了されたのか。

 

 

山本彩さんと渡辺美優紀さんはNMB48というグループのど真ん中に立ち、常に背中合わせで戦っていた。

 

2010年にNMB48が結成されてからすぐ、AKB48の21枚目シングル『Everyday、カチューシャ』の選抜メンバーに選ばれた二人。NMB48というグループを世に売り出していくために東京と大阪を何度も行き来した。

リーダーとしての人望も厚く優等生タイプの山本彩はその歌唱力で48グループの内での存在感を増していき、その愛嬌の良さと群を抜く「アイドル力」を持った渡辺美優紀は握手会でファンを落とす『釣り師』として注目を集めた。黒髪ショートの山本彩はロックを好みギターを弾いたが茶髪ロングの渡辺美優紀はキュートな楽曲を溢れる笑顔でしなやかに踊った。しかしその性格はというと誠実タイプの山本彩は照れ屋であり乙女な部分を持ち合わせている一方、小悪魔タイプの渡辺美優紀は意外とサバサバしており男前と言えた。

 

どこまでも何もかも対照的な二人。しかしNMB48というグループで並び立つと、パズルのピースがぴったりとはまったかのような感覚に陥るのだ。存在感と圧倒的オーラ。息の合ったダンス。NMBのトップ2。そんな二人の姿はまさに「戦友」のようだった。

 

 

 

2016年4月13日、渡辺美優紀はグループからの卒業を発表した。その時彼女は「戦友」山本彩にこう話している。

そして、彩ちゃん。同い年で身長も同じくらいで、血液型も一緒で。私は、最後まで友達のように仲良くというか本当の友達のような関係にはなれなかったけど、今までの人生の中で一番、運命の人だと感じました。 

 涙を溜めてつまずきながらも真っ直ぐに話す彼女は、私には想像できないほどのプレッシャーや苦しみを乗り越えてむしろ潔いほど綺麗に見えたのだ。

本当に一番運命を感じた人で、たくさん悔しいことも…誰よりも素直になれなかったけど、私が一番誰よりもすごい人だということをわかっているし、本当に尊敬しています。

 

 

そして同日深夜、山本彩は公式ツイッターでこう呟いた。

みるきーが隣に居たから 隣にいたのがみるきーやったから 自分らしくいられた。子供みたいな言い方やけど 並んだ時は無敵やって、心のどこかで自信さえ持たせてくれた。この関係性を何て呼んだら良いのかな。名前も付けられへん位 本当に本当に特別な存在。

 

 

「シンメ」というのは、ただ左右対称であることを指すのではない。人は誰かに絶対的に必要とされることを望んでいるし、それが絶対的であればあるほど満たされる生き物だ。もしかしたらオタクたちは人が人生をかけて探し出す「自分の片割れ」を彼女たちの関係性に重ねてしまっているのかもしれない。

 

私がさやみるに惹かれたのは、彼女たちがかっこよかったからだ。そのビジュアルとオーラに圧倒されたからだ。しかし、これほどまでに彼女たちにはまったのは、その関係性に奥深さがあったからだと思う。知れば知るほど、山本彩は、渡辺美優紀は、魅力的であったし、そして「さやみる」はより魅力的であった。彼女たちはオタクたちに不器用で純粋な物語を見せてくれたかのようで、それは彼女が卒業した日に涙がこぼれるほど綺麗なエンディングを迎えた。多くの葛藤を超えて辿り着いた結末が「運命の人」だなんて、誰が想像できただろうか。

 

 


[JT WEB限定動画] ひといきつきながら 運命の人篇 【公式】

 

来春就職を控える今、就職活動について思うこと

私は、来春より社会人になる。私の人生における学生時代は遂に幕を下ろし、4月からはめでたく社会人時代の始まりだ。そんな今、昨年6月に終えることのできた就職活動について思うことをここに書き留めておきたい。

 

 

現在の日本において、四年制大学に籍を置く私のような文系大学生は、三年次の3月1日に就職活動をスタートさせる。リクナビマイナビのような就職支援サイトは0時00分からプレエントリー受付を解禁し、学生たちはこぞってクリック合戦に身を投じた。もちろん解禁日より前に学生たちは『就職活動』をしているし、企業側もやれインターンやら説明会やらで序章戦は始まっていたようだ。

 

私はというと、12月の第一週にとある企業のインターンシップに参加していた。金融系大手企業の開催する五日間のインターンシップだった。そこでは、先輩社員からの有難いお話や一つ上の内定者によるタメになる就活についてのお話を聞くことができ、他にもグループワークを通じ当業界の商品について軽くであったが理解することができた。大変身になる充実した五日間であり、担当人事の方も優しく最終日にはインターン生みんなをご飯に連れて行ってくれた。

 

いいじゃん!!と私は思った。

 

この業界の仕事は誰かの支えになり、やりがいのある仕事だ。社員の方々もみんな格好良かったし、自分もこうなりたい…!と。

 

 

3月1日のプレエントリー開始時、当然のごとく私の第一志望業界はインターンシップを受けたこの業界だった。いくつか他業界のインターンシップにも行き、比較し考えた結果だった。

 

もちろん3月1日が来るのを黙って待っていたわけではなく、その間に『自己分析』や『業界分析』を進めていた私は、この頃には既にこの業界について自分と紐づけて話すことができるようになっていた。ES(エントリーシート)によく登場する『学生時代に力を入れたこと』通称『ガクチカ』も頼れる先輩方に見てもらい、添削をお願いしていた。

 

すると、GWよりも前に内定一歩手前までこぎ着けた。インターンシップを受けた企業ではなかったが、同じ業界の大手企業からだった。

 

「ぜひ、お願いします」と言った。話を聞いている最中、手が震えた。内定がもらえるかもしれない。その時の私にとって、こんな嬉しいことはなかった。

 

 

しかしその日の帰り道、ハタと気づいた。

 

「私、週7日のうち5日間も『金融商品』について考えたくない……!」

 

 

内定一歩手前にしてやっと気づいたのだ。そもそも金融業界のインターンシップを受けたのは何故だ。その企業から内定をもらっていた先輩に誘われたからじゃないか。誰かの支えになれる働き方なんて他にもたくさんあるし、先輩社員が格好良いのはその時見たその人がたまたま格好良かっただけかもしれない…!他にもいくつかインターンには行ったけど、もっと他の業界を見たか?いや、全然見てない。ていうか私が本当にやりたいのって「誰かを支えること」なのか?「格好良い社員になること」か?それで幸せになれるのか?

 

違う、私はもっと、違うことがやりたいはずだ。

 

 

 

そう思い直してから、その企業どころかその業界の志望度は落ちた。ほぼ内定というところまでいったが、さすがに次の面接には身が入らずに(さらに情けないことに熱まで出していて)そこで落ちてしまった。

 

 

私が本当にやりたいことってなんだ?

私はこの先の人生、どうなれば幸せなんだ?

 

そう問い続けてやっと答えらしきものが見えてきた頃には、もう5月も中盤を過ぎていた。『ガクチカ』を見直し『業界分析』をし直しても、やはり時間は足りなかった。

 

 

 

就職活動が始まる一つ下の後輩たちには、どうか「どうすれば内定をもらえるか」に囚われすぎないでほしい。大事なのは「どうすれば幸せになれるか」なのだ。

 

上手な『ガクチカ』を完成させること、面接で言葉巧みに話す練習をすることなんて二の次でいい。私のような失敗をしないためにも、特に今の時期には『自分が幸せになれる企業選び』に全力を尽くしてほしい。

 

自分が幸せになれる企業を選ぶとき。

じゃあどうすれば自分は幸せになれるのか?を考えることは『自己分析』だし、どの企業なら幸せになれるのか?を考えることは『企業研究』だと思っている。

 

 

 

有難いことに、私は探し出した『幸せになれそうな企業』に内定をいただくことができた。しかし、まだ入社していないため実態は正直わからない。もしかしたら間違っているかもしれない。だからこの文章は未来の自分がつまずいた時、この頃の決断を回顧できるようにネット上に放り投げておく。

 

 

また、これは私個人の意見である。就職活動をしている時、多くの先輩に話を伺ったが、十人十色、正反対の意見もあった。悩んでいる後輩たちは、まずは多くの意見を吸収した方が良いのかもしれない。

 

 

それと、就職活動中の風邪には気を付けてください!!