枯れた、彼ら、僕は
ゆっくり、ゆっくりと。心が枯れていくような気がしている。
じわりと浸食されていくのは、心の中の、何か。失えばもう戻ってこないかのような、これは錯覚か、それとも予感か――わからないけど恐怖がただひたすらに私を支配している。季節外れに振った雪はまるで積もっていくストレスを可視化したかのようだった。
どうしてこの世界は、こんなにも冷たいのだろう。「できる人」が許され「できない人」が消えていく現実は、それを黙って見ている風潮は、あまりにも残酷すぎやしないか。
試されているかのような目に背筋を凍らせて、それでも何とか前を向いたけれど、本当はもう泣きそうだった。何も文句は言えないんだ、分かっている。それは社会的圧力でもなんでもなく、目の前を覆う彼らが恐らく「正」だから、なんだけど。
家に帰る時間が遅いことも、入社する前から知っていた。成長志向の社風だって知っていた。だから何も言えない、言えるわけない。ただ、弱いからか――浸食されて、抗ううちに、枯れていく。
ひたすらに「肯定されたい」と思った。この人なら、私を抱くだろうと思った、から、連絡した。元から抱きたいと言われていた相手だ。何度か断っていたけど、もう良かった。別に身体を守りたいわけでもなく、ただ今までは、家に帰らなきゃいけないと思ったから。
久しぶりに会ったその男は「会いたかった」と笑った。
暗い部屋で、キスをされて、身体を触られて。「綺麗だ」なんて荒い息の合間に囁かれた。目をつぶって、祈る。どうか、どうか、枯れた心を満たしてくれ――――
ああ、どうしてこんなに、虚しいんだ。
セックスした後の朝日も、風も、何も私を歓迎してはくれなかった。虚しくて、満たされなくて、ただ気怠かった。